冬と「あんどうふ」のお話
2012.11.28
台ヶ原店の前にある柿の木から実がすっかり落ちてしまい、冬の装いを感じさせる今日この頃です。
暖かい食べ物が恋しい時期ではありますが、
そんな季節にも関わらず金精軒では「あんどうふ」を販売しています。
夏の食べ物を冬に売る、
季節感の無い話だとお思いになられる方もいらっしゃるのではないでしょうか?
ご来店されたお客様からも時々ご質問を受けるので、
今回はなぜ冬に「あんどうふ」なのかをご説明していきたいと思います。
「あんどうふ」は葛を入れた水ようかんですが、
本来、水ようかんは冬のお菓子なんです。
大正時代、お正月に奉公先から帰って来る若者はお土産に羊羹を持って帰っていました。
しかし、その頃の羊羹は非常に値が張るもので、年に一度のおみやげだとしても手が出ません。
そこで、羊羹に水を加えて量を増やした安価な羊羹が出回るようになったのです。
この羊羹は「でっちようかん」と呼ばれ、いまでも関西を中心に売られています。
水ようかんというより、やわらかめの羊羹といった食感で、
小麦粉を加えた蒸し羊羹風のものもあります。
(どちらも羊羹を手軽な価格にすることが目的のお菓子です)
お正月のお土産だった名残で、このでっちようかんは冬の名物なんですね。
水ようかんが何故冬のお菓子なのか、繋がってきましたか?
こうして庶民を中心に広まったでっちようかんですが、
広まるにつれ、「もっと水を入れてつるりとした食感にしたほうが美味しいのではないか?」
と、気が付く方が出始めます。
こうして誕生したのが「水ようかん」なんです。
水ようかんは、近畿、北陸地方を中心として広まっていったそうです。
確かに、あんなに水気の多いお菓子を夏に作ったら腐ってしまいますから、
冬に広まった背景も頷けますね。
いまでも福井ではその風習が残っており、冬の名物として食べられています。
画像の水ようかんは、福井でも有名な「えがわ」様の一枚流しです。
お取り寄せもできる様なのでネットで探してみては如何でしょうか。
水ようかんが夏の食べ物になったのは冷蔵庫が普及するようになった昭和からなんだそうです。
いまでは、夏の季語にまでなってしまった水ようかんですが、れっきとした冬のお菓子なんですね。
そんなわけで、金精軒があんどうふを冬に出す理由がお分かり頂けたでしょうか?
春に桜餅を食べるように、冬は水ようかんを召し上がってみてください。
暖かい部屋で食べる冷たい水ようかんは格別です。